ア | イ | ウ | エ | オ | カ | キ | ク | ケ | コ | サ | シ | ス | セ | ソ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 |
3 |
4 |
2 |
E' |
A |
J |
C |
O |
O |
J |
A |
J |
C |
J |
タ | チ | ツ | テ | ト | ナ | ニ | ヌ | ネ | ノ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 |
4 |
9 |
1 |
2 |
5 |
4 |
2 |
2 |
5 |
(1) 実際に計算すると分かるように,$J'$ を右からかけると行列の成分が縦の直線を軸に折り返される。よって $X$ の $(i,j)$ 成分と $XJ'$ の $(i, 5-j)$ 成分は一致する。また,$J'$ を左からかけると行列の成分が横の直線を軸に折り返されるから $X$ の $(i,j)$ 成分と $J'X$ の $(5-i, j)$ 成分は一致する。よって,特に $X$ の $(1,2)$ 成分と $XJ'$ の $(1,3)$ 成分,$J'X$ の $(4,2)$ 成分が一致する。以上より,$X$ の $(i, j)$ 成分と $J'XJ'$ の $(5-i, 5-j)$ 成分はつねに一致するから,$X=J'XJ'$ であることは $X$ が点対称行列であることと同値である。これは一般の $n\times n$ 行列に対しても成り立つ。
(2) 行列 $J$ は $J^2=E$ を満たす。行列の積はブロック単位で行えることに注意すると
$$
Q^{\rm T} Q=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} E & J\\ -J & E \end{pmatrix}\begin{pmatrix} E & -J\\ J & E \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} E & O\\ O & E \end{pmatrix}=E'
$$
が成り立つ。よって $Q$ は直交行列である。
$4\times 4$ の点対称行列 $P$ を $2\times 2$ のブロック $4$ 個に分割したとき,右上のブロックは左下のブロックを $180^{\circ}$ 回転したものになっている(左上のブロックと右下のブロックの関係も同様)。よって,$P$ は
$$
P=\begin{pmatrix} A & JCJ\\ C & JAJ \end{pmatrix}
$$
と表すことができる($B=JCJ, D=JAJ$)。このとき
\begin{align}
Q^{\rm T}PQ&=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} E & J\\ -J & E \end{pmatrix}\begin{pmatrix} A & JCJ\\ C & JAJ \end{pmatrix}\begin{pmatrix} E & -J\\ J & E \end{pmatrix}\\
&=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} E & J\\ -J & E \end{pmatrix}\begin{pmatrix} A+JC & -AJ+JCJ\\ C+JA & -CJ+JAJ \end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix} A+JC & O\\ O & JAJ-CJ \end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix} A+JC & O\\ O & D-JB \end{pmatrix}
\end{align}
が成り立つ。
(3) (2) の結果より,$P$ は直交行列 $Q$ によってブロック対角化できる。これは,$P$ の固有値が $A+JC, D-JB$ という $2\times 2$ 行列の固有値から成ることを意味している。よって,$P$ の固有値を求める代わりに $A+JC, D-JB$ の固有値を求めればよい。
$p$ を定数とするとき,行列
$$
P=\begin{pmatrix} 0 & p & 0 & 1-p \\ 0 & p^2 & 1-p & p(1-p) \\ p(1-p) & 1-p & p^2 & 0 \\ 1-p & 0 & p & 0 \end{pmatrix}
$$
は点対称行列である。(2) の一般論を当てはめると
\begin{align}
A+JC&=\begin{pmatrix} 1-p & p\\ p(1-p) & p^2-p+1 \end{pmatrix}\\
D-JB&=\begin{pmatrix} p^2+p-1 & -p(1-p)\\ p & -(1-p) \end{pmatrix}
\end{align}
が成り立つ。$A+JC$ の固有値は,方程式 $\det(A+JC-\lambda E)=0$ の解である。これを解くと
\begin{align}
\lambda^2-(p^2-2p+2)\lambda+(1-p)^2&=0\\
(\lambda-1)(\lambda-(1-p)^2)&=0\\
\lambda=1, (1-p)^2
\end{align}
が得られる。また,$D-JB$ の固有値は,方程式 $\det(D-JB-\lambda E)=0$ の解である。これを解くと
\begin{gather}
\lambda^2-(p^2+2p-2)\lambda+(1-p)^2=0\\
\lambda=\frac{p^2+2p-2\pm p\sqrt{p^2+4p-4}}{2}
\end{gather}
が成り立つ。これに $p=\cfrac{13}{15}$ を代入すれば,$P$ の固有値が
$$
1, \frac{4}{9}, \frac{1}{25}, \frac{4}{225}
$$
であることが分かる。
本問の結果を利用すると,D問題( https://pororocca.com/problem/266/ )を誘導に乗らずに解くことができる。問題の設定において,点 ${\rm P}$ が $2n$ 秒後に点 ${\rm A, D}$ にいる確率を $A_n, D_n$ とし,点 ${\rm P}$ が $2n+1$ 秒後に点 ${\rm B, C}$ にいる確率を $B_n, C_n$ とすると,$A_n, B_n, C_n, D_n$ は漸化式
\begin{align}
A_n&=pB_{n-1}+(1-p)D_{n-1}\\
B_n&=pA_n+(1-p)C_{n-1}\\
C_n&=pD_n+(1-p)B_{n-1}\\
D_n&=pC_{n-1}+(1-p)A_{n-1}
\end{align}
を満たす。これは
\begin{align}
A_n&=pB_{n-1}+(1-p)D_{n-1}\\
B_n&=p^2B_{n-1}+(1-p)C_{n-1}+p(1-p)D_{n-1}\\
C_n&=p(1-p)A_{n-1}+(1-p)B_{n-1}+p^2C_{n-1}\\
D_n&=(1-p)A_{n-1}+pC_{n-1}
\end{align}
のように変形でき,これを行列表示すると
$$
\begin{pmatrix} A_n \\ B_n \\ C_n \\ D_n \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 0 & p & 0 & 1-p \\ 0 & p^2 & 1-p & p(1-p) \\ p(1-p) & 1-p & p^2 & 0 \\ 1-p & 0 & p & 0 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} A_{n-1} \\ B_{n-1} \\ C_{n-1} \\ D_{n-1} \end{pmatrix}
$$
となる。ここに登場した行列は本問の行列 $P$ そのものである。上式を繰り返し用いると
$$
\begin{pmatrix} A_n \\ B_n \\ C_n \\ D_n \end{pmatrix}=P^n\begin{pmatrix} A_0 \\ B_0 \\ C_0 \\ D_0 \end{pmatrix}
$$
が得られる。$A_0=1, B_0=p, C_0=0, D_0=0$ であるから,あとは $P^n$ を求めることができれば $A_n$ の一般項が計算できる。$P$ は $4\times 4$ 行列であり,一般には $P^n$ を求めることは難しい。だが,$P$ は点対称行列だから,本問の結果を利用することによって比較的簡単に計算ができる。$P$ はブロック対角行列に相似だったから
$$
P=Q\begin{pmatrix} A+JC & O\\ O & D-JB \end{pmatrix}Q^{\rm T}
$$
が成り立つ。ここで簡単のため $X:=A+JC, Y:=D-JB$ とおく。このとき
$$
P^n=Q\begin{pmatrix} X^n & O\\ O & Y^n \end{pmatrix}Q^{\rm T}
$$
であり,$P^n$ を計算するには $X^n, Y^n$ を計算すればよいことが分かる。$2\times 2$ 行列の $n$ 乗を求めることはやさしい。結果だけ示すが,$X, Y$ の固有値と固有ベクトルを計算すれば
\begin{align}
X&=\begin{pmatrix} 1 & -6 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & \cfrac{1}{36} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & -6 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}^{-1}\\
Y&=\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 2 & 3 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \cfrac{1}{4} & 0 \\ 0 & \cfrac{1}{9} \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 2 & 3 \end{pmatrix}^{-1}
\end{align}
のように対角化できる。よって
\begin{align}
X^n&=\frac{1}{7}\begin{pmatrix} 1+6\left(\cfrac{1}{36}\right)^n & 6-6\left(\cfrac{1}{36}\right)^n \\ 1-\left(\cfrac{1}{36}\right)^n & 6+\left(\cfrac{1}{36}\right)^n \end{pmatrix}\\
Y^n&=\begin{pmatrix} 3\left(\cfrac{1}{4}\right)^n-2\left(\cfrac{1}{9}\right)^n & -\left(\cfrac{1}{4}\right)^n+2\left(\cfrac{1}{9}\right)^n \\ 6\left(\cfrac{1}{4}\right)^n-6\left(\cfrac{1}{9}\right)^n & -2\left(\cfrac{1}{4}\right)^n+3\left(\cfrac{1}{9}\right)^n \end{pmatrix}
\end{align}
が成り立つ。一方
\begin{align}
P^n&=Q\begin{pmatrix} X^n & O\\ O & Y^n \end{pmatrix}Q^{\rm T}\\
&=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} E & -J\\ J & E \end{pmatrix}\begin{pmatrix} X^n & O\\ O & Y^n \end{pmatrix}\begin{pmatrix} E & J\\ -J & E \end{pmatrix}\\
&=\frac{1}{2}\begin{pmatrix} X^n+JY^nJ & X^nJ-JY^n\\ JX^n-Y^nJ & JX^nJ+Y^n \end{pmatrix}
\end{align}
である。$A_n$ を求めるだけなら,$P^n$ のすべての成分を求める必要はない。$C_0=D_0=0$ だから,必要なのは $P^n$ の $(1,1), (1,2)$ 成分だけであり
\begin{align}
A_n&=(P^n)_{1,1}+\frac{5}{6}(P^n)_{1,2}\\
&=\frac{1}{2}\left[\left\{\frac{1}{7}+\frac{6}{7}\left(\frac{1}{36}\right)^n-2\left(\frac{1}{4}\right)^n+3\left(\frac{1}{9}\right)^n\right\}+\frac{5}{6}\left\{\frac{6}{7}-\frac{6}{7}\left(\frac{1}{36}\right)^n+6\left(\frac{1}{4}\right)^n-6\left(\frac{1}{9}\right)^n\right\}\right]\\
&=\frac{3}{7}+\frac{3}{2}\left(\frac{1}{4}\right)^n-\left(\frac{1}{9}\right)^n+\frac{1}{14}\left(\frac{1}{36}\right)^n
\end{align}
が得られる。
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