この問題の結論は、「恒等的に $0$ でないような $f$ が存在する」$\Leftrightarrow$「ある非負整数 $k$ が存在して $N=2^k$ と書ける」である。以下これを補題1,2,3を用いて示す。
整数とは限らない正の実数 $a$ に対して、関数方程式
$$
\frac{f(x)}{a}=f\left(\frac{x-1}{2}\right)+f\left(\frac{x+1}{2}\right)
$$
を $P(a)$ と書くことにする。
$f$ が 関数方程式 $P(a)$ を満たすとき、$f'$ は $\displaystyle P\left(\frac{a}{2}\right)$ を満たす。
証明: $P(a)$ の両辺を $x$ で微分すると
$$
\frac{f'(x)}{a}=\frac{1}{2}\cdot f'\left(\frac{x-1}{2}\right)+\frac{1}{2}\cdot f'\left(\frac{x+1}{2}\right)
$$
となるので良い。(証明終)
$N=2^k$ となる非負整数 $k$ が存在しないとき、$P(N)$ を満たす関数 $f$ は $f=0$ 、すなわち恒等的に $0$ をとる関数だけである。
証明: $f=0$ が $P(N)$ を満たすのは明らかなので、他にないことを示す。
補題1より、$f$ の $\lceil \log_2{N} \rceil+1$ 階導関数 $g$ は、ある $0.25<a<0.5$ なる実数 $a$ に対し関数方程式 $\displaystyle P(a)$ を満たす。すなわち
$$
g(x)=\frac{2a}{2}\left[
g\left(\frac{x-1}{2}\right)+g\left(\frac{x+1}{2}\right) \right]
$$
である。右辺の $\displaystyle g\left(\frac{x\pm1}{2}\right)$ に対してこの方程式を用いると
\begin{eqnarray}
g\left(\frac{x-1}{2}\right)&=&\frac{2a}{2}\left[g\left(\frac{x-3}{4}\right)+g\left(\frac{x+1}{4}\right) \right] \\
g\left(\frac{x+1}{2}\right)&=&\frac{2a}{2}\left[g\left(\frac{x-1}{4}\right)+g\left(\frac{x+3}{4}\right) \right]
\end{eqnarray}
であり、元の $g(x)$ の式と合わせて
$$
g(x)=\frac{(2a)^2}{4}\left[
g\left(\frac{x-3}{4}\right)+g\left(\frac{x-1}{4}\right) +g\left(\frac{x+1}{4}\right)+g\left(\frac{x+3}{4}\right)\right]
$$
を得る。これを繰り返すことで、正の整数 $n$ に対して
$$
g(x)=(2a)^n\cdot\frac{1}{2^n}\sum_{i=1}^{2^n}
g\left(\frac{x+2i-2^n-1}{2^n}\right)
$$
が成り立つ。$n\to\infty$ では区分求積法により $\displaystyle \frac{1}{2^n}\sum_{i=1}^{2^n}g\left(\frac{x+2i-2^n-1}{2^n}\right) \to \frac{1}{2}\int_{-1}^{1}g(x)dx$ (有限値)となる一方で、$2a<1$ なので $n\to\infty$ で $(2a)^n\to0$ である。よって任意の $x$ に対して $g(x)=0$ であることがわかる。
次に、$G'(x)=g(x)$ となるような関数 $G(x)$ であって $P(2a)$ を満たすようなものを考えよう。$g(x)=0$ なので $G(x)$ は定数関数 $G(x)=b$ に限られるが、そのような $b$ は $b/2a=2b$ で、$a\neq 1/4$ なので $b=0$ である。このように、 $a\neq 1/4$ である限り、$P(a)$ を満たす関数 $f'$ が $f'=0$ しかないならば、$P(2a)$ を満たす関数 $f$ も $f=0$ しかないことがわかる。よって、$N=2^k$ と書けるような正の整数 $k$ が存在しない場合、順々に積分していっても積分定数がずっと $0$ になり、$P(N)$ を満たす $f$ は結局 $f=0$ で全てであることがわかる。(証明終)
ある非負整数 $k$ が存在して $N=2^k$ と書けるとき、$P(N)$ を満たす $f$ は、定数倍を許したある $k+1$ 次多項式で全てである。特に、ある実数 $x$ に対して $f(x)\neq 0$ となるような $f$ が存在する。
証明: 補題1より、$f$ の $k+1$ 階導関数 $g=f^{(k+1)}$ は 関数方程式 $\displaystyle P\left(\frac{1}{2}\right)$ を満たす。補題2の証明と同様の議論により、正の整数 $n$ に対して
$$
g(x)=\frac{1}{2^n}\sum_{i=1}^{2^n}
g\left(\frac{x+2i-2^n-1}{2^n}\right)
$$
が成り立つ。$n\to\infty$ とすることで区分求積法により
$$
g(x)=\frac{1}{2}\int_{-1}^{1}g(x)dx
$$
が成り立ち、$g$ は定数関数であることがわかる。任意の定数 $c$ に対して $g(x)=c$ が $\displaystyle P\left(\frac{1}{2}\right)$ を満たすので、$\displaystyle P\left(\frac{1}{2}\right)$ を満たす関数は $g(x)=c$ ($c$ は $0$ とは限らない任意の定数) で全てである。
では、順次積分していくことで $f$ を求めよう。まず $k=0,N=1$ のとき、解の候補は $f(x)=cx+d$ ($d$ は定数) に限られる。$P(1)$ に代入すると
\begin{eqnarray}
\forall x, cx+d&=&c\left(\frac{x-1}{2}\right)+d+c\left(\frac{x+1}{2}\right)+d \\
&=&cx+2d \\
\Leftrightarrow&& d=0
\end{eqnarray}
よって、$P(1)$ の解は $f(x)=cx$ ($c$ は任意の定数) で全てである。
次に $k=1,N=2$ のとき、解の候補は $\displaystyle f(x)=\frac{c}{2}x^2+d$ ($d$ は定数) に限られる。$P(2)$ に代入すると
\begin{eqnarray}
\forall x, \frac{c}{4}x^2+\frac{d}{2}&=&\frac{c}{2}\left(\frac{x-1}{2}\right)^2+d+\frac{c}{2}\left(\frac{x+1}{2}\right)^2+d \\
&=& \frac{c}{4}x^2+\frac{c}{4}+2d\\
\Leftrightarrow&& d=-\frac{c}{6}
\end{eqnarray}
よって $P(2)$ の解は $\displaystyle f(x)=c\left(\frac{1}{2}x^2-\frac{1}{6}\right)$ ($c$ は任意の定数) で全てである。
以下、順に解を構成することで、$P(2^k)$ の解が $c$ 倍の自由度を持った $k+1$ 次多項式で全てであることが帰納的にわかる。また、$c>0$ として、$x$ を十分大きくとれば、$f(x)>0$ となるので、ある実数 $x$ に対して $f(x)\neq 0$ となるような $f$ の存在がいえる。(証明終)
さて以上より、ある非負整数 $k$ が存在して $N=2^k$ と書けるときに限って題意を満たす関数 $f$ が存在することがわかった。$103<\log_2{20^{24}}<104$ なので、$1$ 以上 $20^{24}$ 以下の整数 $N$ であって題意を満たすものの個数は $104$ 個である。
$P(2^k)$ の解となる $k+1$ 次多項式は、適切なスケール変換をするとベルヌーイ多項式になります(おそらく)。
参考: 『函数方程式概論』(桑垣煥 著, 朝倉書店)
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