解答は,$\boldsymbol{-4046}$
ここでは一般化して考える.
$\cos\theta=t$ とおく.まず,3倍角,5倍角の公式より,
$\cos3\theta=4t^{3}-3t$ …①
$\cos5\theta=16t^{5}-20t^{3}+5t$ …②
が成り立つ.また,$n$ を自然数とするとき,積和公式を利用すると,
$\cos\left(2n+5\right)\theta$
$=\cos\{\left(2n+3\right)+2\}\theta$
$=\cos\left(2n+3\right)\theta\cos2\theta-\sin\left(2n+3\right)\theta\sin2\theta$
$=\left(2t^{2}-1\right)\cos\left(2n+3\right)\theta-\dfrac{1}{2}\{\cos\left(2n+1\right)\theta-\cos\left(2n+5\right)\theta\}$
となり,移項して整理することで
$\cos\left(2n+5\right)\theta=2\left(2t^{2}-1\right)\cos\left(2n+3\right)\theta-\cos\left(2n+1\right)\theta$ …③
を得る.
さて,任意の $n$ について,③が $t$ の整式であることを,数学的帰納法で示す.まず $n=1$ のとき,①,②より主張は正しい.これと②より,$n=2$ のときも主張は正しい.また,$n=k,k+1(k\geqq1)$ について③が $t$ の整式であるとすると,$n=k+2$ についても③は $t$ の整式である.よって,示せた.
ここに,③ $=T(n)$ とし,$T(n)$ における $t$ の項の係数を $a_{n}$ とおく.このとき,①より $a_{1}=-3$,②より $a_{2}=5$,③より
$a_{n+2}=-2a_{n+1}-a_{n}$
をそれぞれ得る.ここに,方程式 $x^{2}+2x+1=0$ は重解 $-1$ をもつため,
$a_{n+2}+a_{n+1}=-\left(a_{n+1}+a_{n}\right)$
$\therefore a_{n+1}+a_{n}=\left(-1\right)^{n-1}\left(a_{2}+a_{1}\right)=2\cdot\left(-1\right)^{n-1}$
両辺を $\left(-1\right)^{n+1}$ で割って移項することにより,
$\dfrac{a_{n+1}}{\left(-1\right)^{n+1}}=\dfrac{a_{n}}{\left(-1\right)^{n}}+2$
$\therefore \dfrac{a_{n}}{\left(-1\right)^{n}}=\dfrac{a_{1}}{\left(-1\right)^{1}}+\sum_{k=1}^{n-1}2=3+2\left(n-1\right)$
$\therefore a_{n}=\left(-1\right)^{n}\left(2n+1\right)$ …④
また,$T(n)$ における定数項の係数を $b_{n}$ とおくと,①より $b_{1}=0$,②より $b_{2}=0$,③より $b_{n+2}=-2b_{n+1}-b_{n}$ をそれぞれ得るから,$b_{n}=0$ となる.
次に,方程式 $\cos\left(2n+1\right)\theta=\dfrac{1}{2}$ …⑤ を考える.
まず,自然数 $i$ に対し,$p_{i}=\dfrac{6i-5}{3\left(2n+1\right)}\pi$ とおく.このとき,任意の $i$ に対し,$p_{i}$ は⑤を満たす.
ここに,任意の $2n+1$ 以下の異なる自然数 $i_{1},i_{2}$ について,$\cos p_{i_{1}}\neq\cos p_{i_{2}}$ が成り立つことを示す.
$\cos p_{i_{1}}=\cos p_{i_{2}}$ なる $2n+1$ 以下の異なる自然数 $i_{1},i_{2}$ が存在すると仮定する.$i_{1}<i_{2}$ として一般性を失わない.このとき,
$0<p_{i_{2}}-p_{i_{1}}<p_{2n+1}=\dfrac{12n+1}{3\left(2n+1\right)}\pi<\dfrac{12n+6}{3\left(2n+1\right)}\pi=2\pi$
より,
$p_{i_{1}}+p_{i_{2}}=2\pi$
$\Leftrightarrow\dfrac{6i_{1}-5}{3\left(2n+1\right)}+\dfrac{6i_{2}-5}{3\left(2n+1\right)}=2$
$\Leftrightarrow6\left(i_{1}+i_{2}\right)-10=6\left(2n+1\right)$
$\Leftrightarrow3\left(i_{1}+i_{2}-2n-1\right)=5$
となるが,$3,5$ は互いに素な自然数であり,かつ $i_{1}+i_{2}-2n-1$ は整数であるから,$3\left(i_{1}+i_{2}-2n-1\right)\neq5$ となり矛盾する.したがって,任意の $2n+1$ 以下の異なる自然数 $i_{1},i_{2}$ について,$\cos p_{i_{1}}\neq\cos p_{i_{2}}$ が成り立つことが示された.
さて,⑤は $T(n)=\dfrac{1}{2}$ …⑥ と同値である.
ここで,$T(n)$ の次数を $c_{n}$ とすると,$c_{n}=2n+1$ であることを示す.
③より,$c_{n+2}=\max\{2+c_{n+1},c_{n}\}$ …⑦ である.ここに,次の【補題】を示す.
【補題】すべての自然数 $n$ に対し,$c_{n}<2+c_{n+1}$
【証明】数学的帰納法で示す.まず,①,②より,$n=1$ においては成り立つ.次に,$n=k(k\geqq1)$ で成り立つとすると,⑦より $c_{k+2}=2+c_{k+1}>c_{k+1}$ すなわち $c_{k+1}<c_{k+2}+2$ だから,$n=k+1$ でも成り立つ.よって,補題は示された.$\blacksquare$
補題と⑦より,任意の自然数 $n$ に対し,$c_{n+1}=c_{n}+2$ である.したがって,①より $c_{1}=3$ だから,$c_{n}=3+2\left(n-1\right)=2n+1$.よって,示せた.
これより,⑥は $t$ の $2n+1$ 次方程式である.このとき,$2n+1$ 次方程式の実数解の個数は高々 $2n+1$ 個であり,$\cos p_{1},\cos p_{2},...\cos p_{2n+1}$ はすべて異なる実数だから,これらは⑥のすべての解である.したがって,$T(n)$ の $t^{2n+1}$ の項の係数を $d_{n}$ とすると,解と係数の関係により,
$\sum_{i=1}^{2n+1}\sec\dfrac{6i-5}{3\left(2n+1\right)}\pi$
$=\sum_{i=1}^{2n+1}\dfrac{1}{\cos\dfrac{6i-5}{3\left(2n+1\right)}\pi}$
$=\sum_{i=1}^{2n+1}\dfrac{1}{\cos p_{i}}$
$=\dfrac{\dfrac{\left(-1\right)^{2n}a_{n}}{d_{n}}}{\dfrac{\left(-1\right)^{2n+1}\left(b_{n}-\dfrac{1}{2}\right)}{d_{n}}}$
$=2\left(-1\right)^{n}\left(2n+1\right)$
$n=1011,i=k$ の場合を考えると,
$\sum_{k=1}^{2023}\sec\dfrac{6k-5}{6069}\pi$
$=2\cdot\left(-1\right)^{1011}\cdot2023$
$=-4046 \square$
※本問はチェビシェフの多項式を題材にしている.$\cos k\theta$ の $k$ が奇数でなくても,$t$ の多項式で表すことができ,次数は $k$ である.
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