$S_r$ が格子点をもつことは,$x,y,z$ に関する方程式
$$
x^2+y^2+z^2=r
$$が整数解をもつことと同値である。
1.まず,$r=1, \cdots, 6$ のときは
\begin{align}
1^2+0^2+0^2&=1 \\
1^2+1^2+0^2&=2 \\
1^2+1^2+1^2&=3 \\
2^2+0^2+0^2&=4\\
2^2+1^2+0^2&=5\\
2^2+1^2+1^2&=6
\end{align}となるから整数解が存在する。一方,$r=7$ のときには整数解が存在しない。これは $x,y,z$ の候補をすべて列挙して示すこともできるが,ここでは一般に $r\equiv 7 \; ({\rm mod}\;8)$ のとき整数解が存在しないことを証明する。一般に,整数 $n$ に対して $n^2$ を $8$ で割った余りは $0,1,4$ のいずれかである。$0, 1, 4$ から重複を許して $3$ 個の数を選んだとき,その和が $7$ になることはないから,$r\equiv 7 \; ({\rm mod}\;8)$ のとき整数解が存在しないことが示された。したがって, 球面 $S_r$ が格子点を含まないような最小の $r$ は $r=7$ である。
2.準備として,$r$ が $4$ の倍数で,
$$
x^2+y^2+z^2=r
$$を満たす整数 $x,y,z$ が存在するならば,$x,y,z$ はすべて偶数であることを示す。まず,右辺は偶数だから,$x, y, z$ はすべて偶数であるか,$2$ 個が奇数で $1$ 個が偶数であるかのいずれかである。一般に,整数 $n$ に対し $n^2$ を $4$ で割った余りは,$n$ が偶数なら $0$,奇数なら $1$ である。よって,$x^2+y^2+z^2$ を $4$ で割った余りは,$x,y,z$ がすべて偶数のときは $0$,$2$ 個が奇数で $1$ 個が偶数のときは $2$ になる。したがって,$r$ が $4$ の倍数ならば,$x,y,z$ はすべて偶数である。
この準備のもとで,$8$ の倍数である $r=112=4^2\cdot 7$ が条件を満たす最小の $r$ であることを示す。まず,整数解が存在しないことを示す。
$$
x^2+y^2+z^2=112
$$を満たす整数 $x,y,z$ が存在したと仮定する。$112$ は $4$ の倍数だから,上の議論より $x, y, z$ はすべて偶数である。よって,整数 $x’,y’,z’$ を用いて $x=2x’, y=2z’, z=2z’$ と表せる。よって
$$
x’^2+y’^2+z’^2=28
$$が成り立つ。右辺の $28$ も $4$ の倍数だから,まったく同様の議論より
$$
x’’^2+y’’^2+z’’^2=7
$$を満たす整数 $x’’, y’’, z’’$ が存在することになるが,これは 1. の結果と矛盾する。したがって,$r=112$ のとき整数解は存在しない。
次に最小性を示す。そのためには,$8\leq r<112$ であるような任意の $8$ の倍数 $r$ に対して整数解が存在することを証明すればよい。その際,$r$ が平方因子をもち $r=p^2q$($p,q$は整数)と表せるときには,$r=q$ のときに整数解 $(x,y,z)=(x_0,y_0,z_0)$ が存在するならば $r=p^2q$ のときに $(x,y,z)=(px_0,py_0,pz_0)$ が解になる。この事実を利用すれば,効率的に整数解の存在を証明することができる。$8\leq r<112$ を満たす $8$ の倍数は
$$
r=8,16,24,32,40,48, 56, 64, 72, 80, 88, 96,104
$$であるが,このうち $r=40, 56, 88,104$ 以外は
\begin{gather}
8=2^2\cdot 2, \;16=4^2, \;24=2^2\cdot 6, \;32=4^2\cdot 2,\;
48=4^2\cdot 3\\ 64=8^2,\; 72=6^2\cdot 2,\; 80=4^2\cdot 5,\; 96=4^2\cdot 6
\end{gather}と表せるから整数解の存在は 1. の結果より直ちに従う。また,$r=40=2^2\cdot 10, \;r=56=2^2\cdot 14,$$\;r=88=2^2\cdot 22, \; r=104=2^2\cdot 26$ については
\begin{align}
10&=3^2+1^2+0^2\\
14&=3^2+2^2+1^2\\
22&=3^2+3^2+2^2\\
26&=5^2+1^2+0^2
\end{align}であることから整数解の存在がいえる。したがって,$S_r$ が格子点を含まず,$r$ が $8$ の倍数であるような最小の $r$ は $r=112$ である。
一般に,非負整数 $r$ に対して
$$
x^2+y^2+z^2=r
$$となるような整数 $x,y,z$ が存在するための必要十分条件は,$r$ が 非負整数 $n,k$ を用いて
$$
r=4^n(8k+7)
$$という形で表されないことであることが知られている。必要性を示すのは解答の議論を一般化するだけだから簡単であるが,十分性($r=4^n(8k+7)$ と表されないなら必ず $3$ つの平方数の和で表すことができること)を初等的に証明することは難しい。
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