題意より、$T_0=T_1=\cdots=T_{N+1}=35$ で、さらに $n=1,2,...$ で以下の漸化式が成り立つ。
$$
T_{n+N+1}-T_{n+N}=a(40-T_n)
$$
ここで $t_n=T_n-40$ とおくと、
$$
t_{n+N+1}-t_{n+N}+at_n=0
$$
となる。よって、初期条件 $t_1=\cdots=t_{N+1}=-5$ のもと $n=1,2,...$ で成り立つ上の漸化式で定まる数列 $\{ t_n \}$ について、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} t_n=0$ となる条件について考えればよい。
(1)$N=1$ とする。初期条件 $t_1=t_2=-5$ のもと、$n=1,2,\ldots$ で成り立つ漸化式
$$
t_{n+2}-t_{n+1}+at_n=0\ \ \cdots(\ast)
$$
を考える。ここで複素数 $z$ の方程式
$$
f_1(z)=z^2-z+a=0
$$
の $2$ 解をそれぞれ $\alpha,\beta$ とおく。
・$\displaystyle a<\frac{1}{4}$ のとき
$\alpha,\beta$ は異なる実数であり、$t_n=A\alpha^n+B\beta^n$ とおくと帰納的に $(*)$ を満たすことがわかる。ここで$A,B$ は初期条件より
$$
\begin{eqnarray}
A+B&=&-5\\
A\alpha+B\beta&=&-5
\end{eqnarray}
$$
を満たす定数で、一意に定まる。ここで、$f_1(0)=f_1(1)=a>0,f_1(1/2)=a-1/4<0$ であるから、$\alpha,\beta$ は区間 $(0,1)$ に含まれ、特に $|\alpha|,|\beta|<1$ が成り立つ。したがって $\displaystyle \lim_{n \to \infty} t_n=0$ である。
・$\displaystyle a=\frac{1}{4}$ のとき
$\displaystyle \alpha,\beta=\frac{1}{2}$ であり、一般項は $\displaystyle t_n=-5\left(\frac{1+n}{2^n}\right)$ であることが確かめられる。よってこのときも$\displaystyle \lim_{n \to \infty} t_n=0$ が成り立つ。
・$\displaystyle \frac{1}{4}<a<1$ のとき
このとき、$\alpha,\beta$ は共役な(実数でない)複素数であり、$\displaystyle a<\frac{1}{4}$ のときと同様に $t_n=A\alpha^n+B\beta^n$ とすれば $(*)$ を満たす。$\alpha,\beta$ の絶対値は等しく、その値は
$$
|\alpha|=|\beta|=\sqrt{\left(\frac{1}{2}\right)^2+\left( \frac{\sqrt{4a-1}}{2} \right)^2}=\sqrt{a}<1
$$
であるから、$\displaystyle \frac{1}{4}<a<1$ のとき $\displaystyle \lim_{n \to \infty} t_n=0$ が成り立つ。
・$a=1$ のとき
$\displaystyle \alpha,\beta=\frac{1}{2}\pm\frac{\sqrt{3}}{2}i$ であり、$|\alpha|=|\beta|=1$ であるから$\{ t_n \}$ は収束しない。実際、$\{ t_n \}=-5,-5,0,5,5,0,-5,-5,\dots$ となって、周期 $6$ で循環する。
以上より、$a_c=\fbox{ア}=1$ である。
(注:答えを出すだけなら、空欄の形から、$a=1$で収束しないことだけ確かめればよい。)
(2)$N=2$ として、初期条件 $t_1=t_2=t_3=-5$ のもとで
$$
t_{n+3}-t_{n+2}+at_n=0\cdots(*)
$$
を考える。ここで複素数 $z$ の方程式
$$
f_2(z)=z^3-z^2+a=0
$$
の $3$ 解をそれぞれ $\alpha,\beta,\gamma$ とおく。
・$\displaystyle a<\frac{4}{27}$ のとき
$\alpha,\beta,\gamma$ は相異なる実数であり、$t_n=A\alpha^n+B\beta^n+C\gamma^n$ とおくと帰納的に $(*)$ を満たすことがわかる。ここで$A,B,C$ は初期条件より
$$
\begin{eqnarray}
A+B+C&=&-5\\
A\alpha+B\beta+C\gamma&=&-5\\
A\alpha^2+B\beta^2+C\gamma^2&=&-5\\
\end{eqnarray}
$$
を満たす実定数で、($\alpha,\beta,\gamma$ が相異なるので)一意に定まる。$y=f_2(x)$のグラフを考えると $|\alpha|,|\beta|,|\gamma|<1$ が成り立つことが簡単に確かめられるので、$\displaystyle \lim_{n \to \infty} t_n=0$ である。
・$\displaystyle a=\frac{4}{27}$ のとき
$\displaystyle \alpha=-\frac{1}{3},\beta=\gamma=\frac{2}{3}$ となり、一般項が $\displaystyle t_n=-\frac{5}{9}\left(-\frac{1}{3}\right)^n-\frac{40+30n}{9}\left(\frac{2}{3}\right)^n$ であることが確かめられる。よってこのときも$\displaystyle \lim_{n \to \infty} t_n=0$ が成り立つ。
・$\displaystyle \frac{4}{27}<a<\frac{-1+\sqrt{5}}{2}$ のとき
このとき $\alpha,\beta,\gamma$ は $1$ つの実数と $2$ つの(実数でない)共役複素数である。$\alpha$ が実数で、$\beta$ の虚部が正であると仮定して一般性を失わない。このときも $t_n=A\alpha^n+B\beta^n+C\gamma^n$ とおくと帰納的に $(*)$ を満たすことがわかり、ここで $A,B,C$ は初期条件より
$$
\begin{eqnarray}
A+B+C&=&-5\\
A\alpha+B\beta+C\gamma&=&-5\\
A\alpha^2+B\beta^2+C\gamma^2&=&-5\\
\end{eqnarray}
$$
を満たす複素数の定数で、($\alpha,\beta,\gamma$ が相異なるので)一意に定まる。
$f_2(z)=0$ の解 $\alpha,\beta,\gamma$ が複素数平面上でどのように位置するか考える。まず実数解の $\alpha$ については、$y=x^3-x^2,y=-a$ のグラフの交点を考えることで、$a<2$ のとき $-1<\alpha<0$ であることがわかる。したがって $|\alpha|<1$ である。
次に $\beta,\gamma$ について考えるため、$x,y$ を実数として(ここで $y\neq0$) $z=x+yi$ とおいて方程式に代入すると、実部と虚部がそれぞれ $0$ であることから以下の連立方程式を得る:
$$
\begin{cases}
(x^3-3xy^2)-(x^2-y^2)+a=0\\
(3x^2y-y^3)-2xy=0
\end{cases}\\
\Leftrightarrow
\begin{cases}
x^3-x^2+a+y^2(-3x+1)=0\\
y^2=x(3x-2)
\end{cases}\\
$$
よって実数$x$ は方程式
$$
\begin{eqnarray}
&&x^3-x^2+a+x(3x-2)(-3x+1)=0\\
\Leftrightarrow && g(x)=8x^3-8x^2+2x=a
\end{eqnarray}
$$
を満たす。$g'(x)=24x^2-16x+2=2(2x-1)(6x-1)$ であるから、$g(x)$ は $x=1/6$ で極大値 $4/27$ 、$x=1/2$ で極小値 $0$ をとることがわかる。よっていま $a>4/27$ なので、$g(x)=a$ の解は $x>1/2$ の範囲にただ一つ存在し、その値は $a$ について単調に増加する。よって $\displaystyle a<\frac{-1+\sqrt5}{2}$ であることから、$\displaystyle x<\frac{1+\sqrt5}{4}$ であり、したがって$|\beta|=|\gamma|=x^2+y^2=x^2+x(3x-2)=4x^2-2x<1$ が成り立つ。よって $\displaystyle \lim_{n \to \infty} t_n=0$ が成り立つ。
・$\displaystyle a=\frac{-1+\sqrt{5}}{2}=0.618...$ のとき
このとき
$$
\begin{eqnarray}
\alpha&=&\frac{1-\sqrt{5}}{2}\\
\beta&=&\frac{1+\sqrt{5}}{4}+\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}i\\
\gamma&=&\frac{1+\sqrt{5}}{4}-\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}i
\end{eqnarray}
$$
であり、$|\alpha|<1, |\beta|=|\gamma|=1$ を満たす。($B,C$ が $0$ でないことはすぐ確かめられるので)$\{ t_n \}$ は収束しない。
以上より、$\displaystyle a_c=\frac{-1+\sqrt{5}}{2}$ である。したがって $\fbox{イウ}=-1,\fbox{エ}=5,\fbox{オ}=2$ である。
長々と書いてしまいましたが、要は特性方程式の根の絶対値がいずれも $1$ より小さくなる条件を求めればよいということです。そのような必要十分条件として、Jury条件というものが知られています(https://en.wikipedia.org/wiki/Jury_stability_criterion )。
これを用いると、一般の線形差分方程式の定常解が安定である条件を簡単に求めることができます。
また、本問は、フィードバックシステムにおいて時間遅れがある場合、パラメータがある閾値を超えると定常解が不安定化し、励起振動が生じうるという事実が背景にあります。実際、本問の式の連続版である
$$
\frac{dx(t)}{dt}=-ax(t-T)
$$
($a>0$、$T>0$ は時間遅れを表す定数 )を考えると、定常解 $x=0$ は $aT<\pi/2$ の時に安定となり、$aT>\pi/2$ で振動的な振る舞いが現れます。
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